大阪府堺市南区茶山台1丁目2番4号 バンジョ西館3階メディカルセンター
堺市の大槻レディースクリニック
ライブラリ
子宮頸がんワクチン

中高生を対象にした子宮頸がんワクチン(ヒトパピローマウイルスワクチン、以後HPVワと略)接種は法律に基づく定期接種が行われてきましたが、ワクチンとの因果関係が疑われる持続的疼痛が見られ平成25年6月より厚生省の積極的な接種勧奨が控えられてきました。その後検討が行われ、令和4年3月より積極的接種の勧奨が再開されました。また、接種の機会を逃した方へ、キャッチアップ接種が実施(無料)されることになりました。対象者は、1)平成9年4月2日から18年4月1日までに生まれた女性、2)平成18年4月2日から平成19年4月1日生まれの女性(令和5,6年度のみ)、3)平成19年4月2日から平成20年4月1日生まれの女性(令和6年度のみ)です。既に1,2回のHPVワ接種を受けている方は、残りの分だけが対象になります。
キャッチアップ接種の対象となる方は、接種するか再検討してください。

ワクチンの効果
日本以外の国ではHPVワ接種は中断しませんでした。現在、子宮頚部異型性以上の病変の発生が、海外では減少していることが明らかになっています。一方、日本では20歳子宮がん検診における細胞診異常率の経年変化(全国24自治体)を見てみると、2000年生まれ(HPVワ停止世代)の方の異常率は上昇していることが判明しています。日本では子宮がんで毎年3000人弱の方が亡くなっていますが、8年間のワクチン接種中断で、12000人の救えた命が将来失われると推定されています。

副作用の頻度は、多くの子供たちが打っている各種ワクチンと比べて高いのでしょうか。公費負担で使用可能なHPVワクチンは2種類(2価と4価)ありますが当院では子宮がんに関係する16型、18型と、外陰部にできる尖圭コンジローマ(感染性の疣)の原因になる6型、11型の4種類のウイルに対する(4価)ワクチンを使用していますので、副作用の頻度もこの4価ワクチンのものです。

〈重篤な副作用の頻度、100万接種あたり〉
ワクチン HPV ヒブ 肺炎球菌 ポリオ 4種混合 日本脳炎 インフル
頻度 8.9 8.7 9.3 4.3 9.0 13.9 1.0

これを見ていただくとHPVワにも重篤な副作用があることはわかりますが、子供たちが打っている他のワクチンと比べて大きな差があるようには見えません。
ワクチンを打つか打たないかは、個人の自由意思で決めていただくしかありません。

9価HPVワクチン
HPV 6,11,16,18,31,33,45,52,58型の感染を予防するワクチンです。4価のワクチンはHPV 6,11,16,18型に対する成分を含みます。子宮がんに占めるHPV16,18型の割合は65%なので、この部分に有効と考えられます。9価だと含まれるHPVが関係する88.3%の子宮がんに有効なので効果はさらに増強しています。副反応は、4価のワクチンと似ていますが頻度は少し増えるようです。今後は9価のワクチンが広く使われるようになると思いますが、定期接種にいつから組込まれるかは未定です。現在は自費で希望者にのみ接種しています。3回打てば10万円もかかる高価なワクチンです。

アンチエイジング
  • “年はとりたくない”と思っても、必ず年齢は増えていきます。年齢を重ねると誰でも老化はしますが、健康で充実した生活ができるようにするために、何をすると良いのかを考えるのがアンチエイジングです。
    老化には、代謝異常・体内の酸化・免疫能の低下・骨や筋肉の老化・血管の老化・脳の老化・ホルモンの老化などがありますが、バランス良く老化が進んでいると体は充実しています。一方どこか老化が年齢以上に進んでいる所があると、老けこんで健康でないように感じます。老化度により同じ年齢でも、活動できる内容や充実感に大きな差がつきますし、寿命にも影響します。
    アンチエイジングは、老化度をいろいろな方向から検討し、異常に老化の進んだ部分の改善と積極的な健康増進を目指す、新しい医療です。したがって検査の項目も、人間ドックなどの病気の発見を目指すものとは多少異なります。一般の人は、あまり聞いたことのない検査も含まれています。
    具体的な検査、健康対策(体重管理、漢方薬、針灸、DHEAを含むホルモン補充療法、メラトニン、サプリメント)は、このホームページを参考にしていただくか、直接お問い合わせ下さい。
【診断】老化度の判定(以下は基本検査です)
1.問診 更年期障害や心の状態、生活習慣や改善したい部分についての質問です。
2.基本測定
[身長、体重、体脂肪率、筋肉量、腹囲、血圧]
身長に対する体重の割合だけでは、体重が適切かどうか判断できません。たとえば標準体重でも筋肉が少なく、脂肪の多い人もあります。体重だけでなく、体脂肪率、筋肉率が重要です。
3.生化学検査
[糖代謝、脂質、コレステロール、酸化ストレス関連物質]
糖尿病は全身の臓器を害する病気です。体重管理、カロリーで症状の出る前に治療が必要です。脂質代謝異常は、血管病変を引き起こし、心筋梗塞や脳血管障害を起こします。
4.ホルモン測定(ホルモンの老化度)
[コルチゾール、DHEAsなど]
ストレスのかかり具合を見たり、体の充実感や機能を維持するDehydro-epiandrosterone sulfate(DHEAs)が十分あるか、性ホルモンの分泌などを検査します。DHEAsについてはこの項の終わりに解説します。
5.骨年齢と骨代謝
[骨密度測定、骨代謝マーカー]
骨粗鬆症や骨粗鬆症減少症になっているかの検査です。ご存知のように、骨粗鬆症は寝たきりの原因になる骨折を起します。骨密度の測定や、骨破壊の亢進状態をマーカーで検査します。
6.血管の老化
[頚動脈超音波検査(血管壁の肥厚や狭窄を見ます)]
脳内の血管を簡単に見ることはできませんが、頭蓋内に入る直前の頚動脈の血管壁を観察し、壁の肥厚や内腔の狭窄を調べます。血液のコレステロール値や、日常生活の問診表と総合して血管の老化リスクを判断します。
7.筋肉年齢
[問診、運動テスト、握力測定]
脚力や握力が低下すると、日常の生活範囲が大きく制限されますし、寝たきり状態になりやすくなります。起き上がる時、つかむ力(握力)がないと、立ち上がることが困難になります。
8.神経の老化
[問診とテスト(睡眠障害、うつ病、大脳機能)]
加齢とともに脳内のメラトニン分泌能が低下し、睡眠障害が起こりやすくなります。体調の不良と認識されている中に、うつ状態の方が多く含まれます。これは脳内のセロトニン分泌が低下して起きています。
また、自分で気が付かないうちに、ボケが進行している場合もあります。これらは、生活の工夫や必要なら治療する薬剤が必要となります。メラトニンについては、この項の終わりに解説します。
9.その他
[肌の老化、性行為に関係した改善]
皮膚の老化はその80%が紫外線によるといわれています。性行為に関係した改善のご希望は、問診票に記載していただきます。

以上の検査は、一度にすべて検査することも、まず一番気になる検査だけすることも可能です。
お勧めは、気になる項目から1つずつ検査(一部は自費)することです。一度にすべて検査すると健康診断となり、自費(2万5千円)になります。

【治療内容】各個人の検査データに基づき、ご本人の希望に合わせアドバイスします。
1.肥満の解消
[運動・食事、漢方薬、サプリメント、マイクロダイエット]
筋肉率や体脂肪率から体重・筋力の調整をアドバイスします。
2.ストレス対策
[運動、趣味]
コルチゾールの高い人は、ストレスがかかっている場合があります。気分転換が必要です。
3.睡眠指導
[生活のリズム、睡眠薬、メラトニン補充]
昼間、明るい光を見たり、脳内メラトニンの分泌を促進する
食品の指導。メラトニン補充療法のための情報を提供します。
4.更年期指導
[漢方薬、サプリメント、ホルモン補充療法(DHEA他)]
副作用の少ない治療法をご希望の方には、針灸治療をしたり、漢方薬を処方いたします。女性ホルモンの補充療法は、長期に使用すると乳癌が少し増加(一万人で8人増加)するので、短期間(5年以内)がお勧めです。
DHEAは最近注目されている薬剤で、からだの充実感や寿命にも影響のあるホルモンです。血中DHEAsが低い人では、補充療法をしても良いかもしれません。(この項の終わりに薬剤説明があります。)
5.動脈硬化予防
[肥満・高脂血症の管理]
糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満、運動不足は血管を傷めて脳や心臓の病気を引き起こす元になります。原因に合わせ、治療をアドバイスしますが、基礎は食事と運動です。高脂血症があり血管壁の肥厚がある人は、ハイリスクなので高脂血症治療薬や抗凝固剤の内服が必要です。
6.脳の老化予防
[運動、作業、イチョウ葉]
脳は使わないと老化が早まります。何か細かな手作業や、歌を歌うのも効果があります。ビタミンEやイチョウ葉は以前から有効といわれています。
最近非ステロイド系消炎鎮痛剤や高コレステロール治療薬の中に、アルツハイマー病の予防効果があると言われる様になりました。どんな薬剤を使用するかは、問診・血液検査の結果も合わせて判断いたします。
7.筋力トレーニング
[運動の習慣づけ、アミノ酸、DHEA]
立ったり座ったり、歩行したり、階段を上がったりするにはある程度の筋力が必要で、一定のライン以下に筋力が落ちると、寝たきりになってしまいます。このラインぎりぎりの人は、病気でしばらく寝込み、筋力が落ちると寝たきりになります。したがって、高齢な方でもある程度の筋肉を維持するよう、毎日の努力が必要です。
8.骨密度の上昇
[食事、運動、薬剤]
骨密度の低下は、骨折を起しやすくします。若いうちに骨を丈夫にしておかないと、老化が始まるとすぐに骨粗鬆症にまでなってしまいます。食事や運動は基本的に重要ですが、骨粗鬆症になると食事だけでは無理です。
薬剤には女性ホルモンもありますが、主にはビスフォスフォネート製剤(ボナロン、アクトネル)、SERM製剤(エビスタ)が主に使用されます。最近SERM製剤には乳癌の予防効果があることも分かって来ました。1つの薬で2つの効果はありがたいです。
9.皮膚の老化予防
[紫外線対策、ビタミン、レチノール]
皮膚の老化の80%は日焼けで起こります。若い時からの障害が積み重なって、シワ・シミができてきます。これからでも遅くはありませんから、外出時の紫外線対策はしっかり行ってください。抗酸化作用のあるビタミンA,C,EとコエンザイムQ10の摂取も重要です。できてしまったシワは、皮膚のコラーゲンを増やすレチノール美容液がお勧めです。会社の資料では、10年前の肌を取り戻すような説明があります。
10.性交障害(ED)
[ホルモン療法、リューブゼリー、レビトラ、バイアグラ]
女性ホルモンが出なくなると、膣粘膜の萎縮・分泌物の減少から、性行為に痛みを伴うようになりがちです。弱いホルモンを使用するだけで改善されますが、副作用が心配でホルモンの内服に躊躇される方は、膣錠もあります。
また、潤滑油の働きをするゼリーを局所に使用するのも、効果があります。男性の勃起障害に対して、当院ではレビトラを置いています。バイアグラと比べ、効果発現までの時間が短いことや、食事の影響(食後は薬剤吸収が低下)を受けにくい特徴があります。ニトロ製剤を使用していない人に限って使用できます。

薬剤の解説
  1. DHEA(体内ではDHEAsとして存在) DHEAは、男性ホルモンや女性ホルモンの元になる物質で、血液中には多量のDHEAがありますが、その役割はよくわかっていませんでした。最近動物実験などで、寿命を延ばす効果が示されました。他にも、充実感の改善、抗肥満、免疫賦活作用、抗癌作用、抗炎症作用、骨・筋肉の維持、皮膚の改善、抗痴呆、が知られています。そのため、血液中のDHEAの低い人に対して、DHEAの補充療法が注目されています。
    もともと体内にあるホルモンなので、ホルモン値の低い人に補充をしても大きな副作用はありませんが、低率ながら肝機能障害や、弱い男性ホルモン作用があるため、ニキビ、乳房の圧痛、多毛などがあり得ます。
    男性の場合、前立腺の肥大、前立腺癌が発生の可能性が否定できないので、血中ホルモン・腫瘍マーカーの測定をしながら、投与量の調整を行います。女性の場合は、血中ホルモンの測定で投与量の調節は必要ですが、前立腺癌の心配はありません。 アメリカでは、一般のサプリメントとして医師の処方がなくても、購入できますが、DHEAは日本では市販されていません。購入を希望される場合は、方法についてアドバイスいたします。
  2. メラトニン 人には体内時計があり、夜になると眠くなり朝になると目覚めます。このリズムを維持するためには、脳内で分泌されるメラトニンが大きな働きをしています。脳内では10歳頃をピークに、メラトニンの産生が減少していき40-50歳頃には、ピークの4分の1から5分の1に低下しています。
    お酒や睡眠薬で眠ろうとされている方も多いかもしれませんが、お酒を飲んで寝ても早朝に覚醒したり、睡眠薬ではすっきりとした覚醒が得られないことがよくあります。夜間の睡眠の質を高めるためには、脳内のメラトニンの分泌を高めるようにすることが大切です。朝起きてから、明るい光を浴びるようにしてください。
    メラトニンはセロトニンやトリプトファンといったアミノ酸が代謝され作られます。これらのアミノ酸を多く含む食品(バナナ、牛乳)を摂るようにするのも、いいかもしれません。メラトニンの内服を試されるのも1つの方法です。但し、メラトニンは睡眠薬ほどの強い入眠作用はありません。メラトニンは睡眠作用のほかに、抗酸化作用、破骨細胞の抑制作用(骨粗鬆症の抑制)が知られています。
    メラトニンは、アメリカでは処方箋無しで、誰でも購入できますが。日本では販売されていません。
  3. 女性ホルモン補充療法
    1. ホルモン補充療法の効果;
      骨の老化予防、皮膚のコラーゲン増加(シワの予防)、血中LDLコレステロールの下降作用があります。また、膣粘膜を豊にして、萎縮性膣炎の改善、性行為も可能にしてくれます。脳の活動も高まり、記憶などの認知機能・抑うつ気分の改善、更年期障害の改善も期待されています。これらは、卵胞ホルモンによる効果です。
    2. 薬の種類;
      1. 通常のホルモン補充療法; 卵胞ホルモンには飲む薬、貼る薬、塗る薬があります。これらはホルモン作用に大きな違いはありませんが、中性脂肪抑制・血栓形成に少し違いがみられます。子宮のある人は、黄体ホルモンの併用が必要です。月経を起こす方法、起こさない方法があります。保健扱いで1ヶ月1200−2000円程度かかります。使用感の優れた塗る卵胞ホルモン(資生堂)は保健扱いではありませんが、ピルとよく似た値段です。
      2. ホルモン作用の弱いエストリオール補充療法; 骨や膣にのみ効果。膣の委縮を防ぐには、内服薬より膣錠が勧められます。
    3. 副作用;
      心筋梗塞、脳卒中、血栓症、乳癌が増える可能性があります。心筋梗塞は、高齢でホルモン補充を初めて開始すると増加しますが、50歳代でホルモン補充を始めても増加しません。
      脳卒中も高血圧患者・高容量卵胞ホルモンでは増加しますが、低量のホルモン補充療法では増加しません。血栓症は経口ホルモン補充療法で増加しますが、高齢者・肥満者ほどリスクが高まります。長期(5年以上)にホルモン補充を行うと乳癌が少し増加しますが、乳癌で亡くなる方は増加しません。
      卵胞ホルモンだけ使用する場合(子宮摘出を受けた人)では、長期使用でも乳癌は増加しません。その他に卵巣癌、子宮筋腫の増大、内膜症の悪化が報告されています。50歳代に5年程度をめどにして、ホルモン補充療法を行うのが比較的安全と考えられます。さらに経皮吸収卵胞ホルモンを用いると、血栓は起こりにくく中性脂肪は低下する可能性があります。
    4. ホルモン補充療法のできない人;
      乳癌・子宮内膜癌・血栓症・心筋梗塞・脳卒中になった人、現在活動性の肝疾患がある人、妊婦はホルモン補充療法ができません。肝疾患・胆嚢疾患・肥満、重症の高脂血症一高血圧・糖尿病のある人は、されないほうが良いと思います。子宮筋腫・子宮内膜症・片頭痛のある方は、ホルモン補充療法は可能ですが慎重に検討しないといけません。
    5. ホルモン補充療法の実施;
      ホルモン補充療法をされる場合は、必ず乳癌健診・子宮癌(頚部・体部)検診と血液検査を開始前に受けてください。以後、年に一度は検査が必要です。

(補足)ホルモン補充療法 ガイドライン2012  抜粋

〈HRTの効果〉

  • 更年期障害;のぼせ、寝汗、性機能障害、膣乾燥、記憶力低下、頻尿、イライラ、不安、関節痛、四肢痛に効果
  • 骨代謝;骨吸収の抑制と骨密度の増加、骨減少のある女性で骨折予防効果
  • 糖・脂質代謝;血糖とインシュリンの低下、糖尿病の新規発生抑制、エストロゲン補充療法(ET)では、LDLコレステロールの低下、HDLの増加。
  • 血管機能;血管内皮機能の改善、頸動脈肥厚の抑制
  • 血圧;血圧に変動を与えない
  • 認知機能・アルツハイマー病;ETは認知機能を改善、EPT(エストロゲン+プロゲステロン補充療法、特にメドロキシプロゲステロン/MPA使用時)は認知機能に有害。アルツハイマー病発症リスクを低下させる可能性。抑うつ症状;抑うつ気分・抑うつ症状を改善。
  • 皮膚萎縮予防;HRTにより皮膚のコラーゲン量が増加、皮膚の厚みの増加。皮膚組織の性状の改善が期待されるが、その効果のみを目的としてHRTを推奨するデータは不十分。
  • 泌尿生殖器;性器萎縮・性交痛に効果。過活動膀胱の症状緩和。尿失禁は不明。
  • 口腔効果;顎骨骨密度が増加。残存歯数は増加するとの報告があるが非確定。

〈HRTの有害事象〉

  • 不正性器出血;事前に悪性腫瘍の否定と繰り返し検査。筋腫・ポリープでも出血。
  • 乳房痛;5%未満ではあるが乳房痛がある。エストロゲンの減量が有効。
  • 片頭痛;HRTは片頭痛を悪化させる可能性があるが、禁忌ではない。
  • 乳がん;浸潤性乳がんリスクを増加させるが、5年未満ではリスクは上昇しない。天然型プロゲステロン・ジドロゲステロンでは増加しないとの報告がある。また、日本人での検討では、増加は認められなかった。ETでは増加しない。
  • 動脈硬化・冠動脈疾患;糖代謝異常のある女性では、動脈硬化を促進する。通性脂肪を増加させLDLを小型化させる。MPAはHDLを低下させる。天然型は影響ない。健康女性を対象とした経口ET・EPTの心筋梗塞発症リスクは年齢とともに上昇。高齢者・虚血性疾患のある女性では心筋梗塞リスク上昇。閉経早期の健康女性では心筋梗塞リスクは増加しない。冠動脈疾患の二次予防に経口HRTをすべきでない。
  • 脳卒中;HRTは虚血性脳卒中のリスクを増加させる。高血圧・エストロゲン高投与量で増加。脳血管障害の二次予防にHRTを行うべきではない。
  • 静脈血栓塞栓症(VTE);経口HRTはVTEのリスクを2-3倍に増加させる。年齢・体脂肪率の上昇で増加。HRT開始1年以内が最も多い。VTE既往者は再発リスク高い。経皮エストロゲンではVTEの増加は明らかでない。
  • 子宮内膜癌;ETは子宮内膜癌のリスクを上昇させるが、死亡率に変化はない。EPTはリスクを上昇させない。内膜増殖症の発症も同様。周期的投与法より持続的併用投与法のほうが子宮内膜癌リスクは低下。
  • 卵巣癌;HRTにより卵巣癌リスクが上昇する可能性がある。EPTではETよりリスクが低い。
  • その他の腫瘍;子宮頚部腺癌のリスクが上昇する可能性がある。低悪性度子宮内膜間質肉腫にHRTは禁忌。悪性黒色腫のリスクを上昇させる可能性がある。肺がんリスクを上昇させる可能性を否定できない。筋腫の増大、内膜症の再燃の可能性。

〈ホルモン補充療法(HRT)最近の話題〉

HRTで癌が増えないか心配される方がおられるので、2017年秋に改訂されたホルモン補充療法ガイドラインより、HRTと癌の問題を抜粋してみました。

 HRTで増加する癌もありますが、減少する癌もあります。大腸癌はHRTをすることにより30-40%減少します。過去にHRTをした人でも、その後の大腸癌の発生は低くなります。胃癌・食道癌・肺癌も減少します。肺癌も減少すると言われています。

 一方で増える癌もあります。これまで5年以上HRTを行うと乳癌が増えるのではと危惧され、HRTは5年未満にと思われている人がいました。乳癌リスクの今回のガイドライン記載は「乳癌リスクに及ぼすHRTの影響は少なく、主として併用される黄体ホルモンの種類とHRTの施行期間に関連する」とされています。
 以前より欧米人と違い日本人を対象とした検討では、HRTによる乳癌の増加は指摘されていません。ただし、民族的にも近い国の台湾・韓国ではHRTによる乳癌の増加が言われていますので、日本人ならまったく大丈夫かは今後の検討も必要です。どれくらい増えるかも問題です。
 肥満・タバコ・お酒が乳癌を増やすことが知られていますが、HRTの乳癌リスクはこれらと同等かそれ以下なのです。日常生活を改めることも乳がんを抑制するために必要です。ホルモンの種類も大きな要因です。
 古くから用いられてきた黄体ホルモンを、天然型プロゲステロンやジドロゲステロンにすると乳癌は増加しないといわれるようになりました。ホルモン補充療法は以前考えられたように、黄体ホルモンをより安全なものにすれば5年で止めないといけないことはありませんが、乳癌検診を定期的に受け、薬剤は安全なものを選択することが重要です。

 その他の腫瘍では、子宮頚部腺癌・基底細胞癌・髄膜腫を増加させる可能性があります。卵巣癌リスクも30%程度上昇する可能性がありますが、卵巣癌は1万人当たり2-2.5人の発生頻度の低い癌のため、HRTによる卵巣癌起因の死亡率増加は軽度です。女性が亡くなる主な癌が大腸癌・肺癌であり、HRTによりこれらの癌が減少する結果、HRTにより癌の死亡率が全体では低下すると考えられています。

 いつまでHRTは継続可能か?については、「HRTの継続を制限する一律の年齢や投与期間はない。」となっています。国際的にもHRTの投与期間に、制限は付けないのが一般的です。HRTはまったくリスクのない治療法ではありませんが、リスクを上回るベネフィットがあり患者さんの希望があればいつまでも継続です。年に一度は必要な検査を受け、HRTの目的とリスクのバランスを自分で考えてみてください。わからないときは、いつでもご相談ください。

更年期障害の緩和とサプリメント
  • イソフラボン;イソフラボンは大豆、葛、レッドクローバーなどに含まれるフラボノイドで、植物性エストロゲン作用を有しています。弱いエストロゲン作用が更年期障害、骨粗鬆症に有効ではないかと期待されています。1日25gの大豆たんぱく摂取で、骨量の低下した更年期女性の骨量が増加したとの報告があります。大豆イソフラボンは、特定保健用食品として“骨の健康が気になる方に適する食品“として表示することが認められています。また、大豆摂取の多い群では乳癌・前立腺癌の発生が低いとの報告がありますが、反対の報告もあります。これは、各研究で大豆たんぱく摂取量が異なったり、投与する対象の年齢が異なるため、一定の結果が出ないものと推定されます。最近になり、大豆イソフラボンは、腸内細菌で分解され活性のあるエクオールになりエストロゲン作用を発揮することがわかりました。ところが、日本人の半数は体内でエクオールを産生できません。更年期障害の程度は、摂取した大豆イソフラボン量とは無関係でエクオールの産生量との関連が示唆されています。エクオールを産生できない人は大豆イソフラボンを摂っても、狙った効果があまり発揮できないことになります。大豆イソフラボンを活性化したエクオールは、最近製品化され発売されました。このエクオールを内服すると、更年期障害・骨粗鬆症・肌の状態・脂質代謝に効果がありそうです。ところで大豆イソフラボンは、いくら摂取しても安全なのでしょうか。大豆イソフラボン150r/日を5年間続けると子宮内膜増殖症が増えたとの報告があり、大量・長期投与による有害作用の可能性も注意しないといけません。国外・国内の食品安全を審査する機関は、大豆・大豆製品からのイソフラボン摂取量の上限を70-75mg/日、特定保健用食品からの摂取する場合の上限は、30mg/日としています。レッドクローバーもイソフラボンを含んでいますが、その有効性・副作用は明らかではありません。レッドクローバーの摂取はお勧めできません。
  • ザクロ;ザクロは女性ホルモンが含まれていると、ザクロジュースや濃縮エキス剤などが一時話題になりました。国民生活センターが代表的な10品目について調査をしたところ、いずれの製品からも女性ホルモン作用は検出できませんでした。副作用としてアレルギーがあったり、過剰摂取による嘔吐・めまい・下痢・呼吸困難などの健康被害が報告されています。ほかには、有効性・安全性についての信頼できるデータはありません。もちろん、ザクロの実や天然100%のジュースは飲んで差し支えなく、抗酸化作用は期待できます。しかし濃縮されたものや、果皮・種子・根などの抽出物には注意が必要です。
  • ブラック・コホシュ;北アメリカ原産のキンポウゲ科の多年草。アメリカ先住民の間で、「女性の不定愁訴」に用いられてきました。最近の研究では、女性ホルモン作用はなくセロトニン受容体に作用して、のぼせ・ほてり・気分変動に効果を示すなどの報告があります。詳しい有効成分は不明。ドイツでは、ほてり・発汗・気分変動についての有効性が認められ、更年期障害・月経前症候群に対しての使用を承認しています。副作用として、消化器症状・頭痛・めまいがあります。妊婦や授乳婦には禁忌になっている。
  • カバ;カバは日本では医薬品の範疇に含まれ、健康食品として販売することは禁じられています。医薬品としての承認もされていません。カバは南太平洋原産のコショウ科の常緑樹で、ポリネシア人はその根をすりつぶして儀式の際の飲み物として用いてきました。抗不安作用があると考えられるが、副作用胃腸症状・めまい・瞳孔散大・皮膚アレルギーのほか、肝機能障害がある。肝臓に影響を及ぼす可能性のある薬剤との併用で、肝毒性が増強される可能性があります。スイス・ドイツ・カナダでも発売禁止になっています。
メキシカンワイルドヤム
  • 更年期障害の1治療手段として、注目のサプリメントがあります。
    日本でも昔から、「山芋を食べると精力が付く」と言われてきました。山芋の強壮滋養作用は、主にねばねば成分のムチンがタンパク質代謝を促すことと、ホルモン様物質ジオスゲニンが含まれているためです。残念ながら、日本の山芋のジオスゲニン含有量はあまり多いとは言えません。海外も含めて山芋の仲間は数百種類ありますが、ヤマノイモ科のヤムイモの中からワイルドヤムが選別され、厳しい品質管理のもとで栽培され製品化されました。
    このヤムイモに含まれるホルモン用物質ジオスゲニンは、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)に生化学的に変換可能な近縁物質です。DHEAは男性ホルモンや女性ホルモンの前駆物質で、我々の体内でもDHEAから性ホルモンが作られています。ヤムイモを摂取した時の効果として更年期障害のほかに、月経前症候群・子宮内膜症・過敏性乳房・骨粗しょう症・乳がんの予防などが期待されています。その効果は、ジオスゲニンそのものの効果であったり、体内で一部が他のホルモン用物質に変換されたためと推定されています。
    サプリメントですから短期間に大きな効果は期待できませんが、副作用も比較的軽度と思われます。似たような物質に大豆イソフラボンがありますが、まったく別の物質です。メキシカンワイルドヤムは、1か月2300円(税別)です。
ヒトパピローマウィルス(HPV)感染
  • 手や足にできるイボを作るウィルスの近縁にあたるウィルスですが、同じものではありません。性行為によって感染する可能性が高く、外陰部尖圭コンジローマや子宮癌の原因になります。女性生殖器に感染するHPVにはいくつかのタイプがありますが、外陰部に感染するタイプでは、コンジローマと呼ばれる小さなイボができます。当院では局所麻酔を用いて外来処置(保険扱い)で切除や焼灼しています。
    放置しておくと、イボ同士が癒合した腫瘤に成長します。子宮頚部に感染するHPVの中でも、ハイリスク群のHPV(No.16、No.18)は長期に感染が持続し、子宮癌が発生する可能性が高いといわれています。ローリスク群は追跡している間に(3年間)多くは消滅します。子宮頚部細胞診で異常が見つかりHPV感染が疑われた場合、ハイリスクタイプのウィルスなのか確かめておくのも一つの方法です。その後の検診スケジュールを決めるのに参考になります。希望される方には検査いたしますが、保険ではできないので、費用が15,000円かかります。
    エイズの頻度は低いのですが、大変危険な性感染症です。少しづつですが増加しています。完治させることはできませんが、発症する前に見つけると、薬剤の進歩で病気の進行が抑えられるようになりました。発症してからでは、薬剤の効果が劣ります。
    性感染症の恐れのある相手との性行為には、必ずコンドームを使用してください。低容量ピルは、避妊効果はありますが性感染症の予防にはなりません。
アミノインデックスを用いた新しい婦人科癌スクリ−ニング
  • 婦人科癌(子宮頸癌・体癌、卵巣癌・乳癌)のリスクを判定する検査です。これまで各種の腫瘍(癌)マーカーがありましたが、これらは腫瘍から直接あるいは腫瘍に反応して放出される多糖類・タンパク・ホルモンを測定する検査でした。
    今回、新たに開発されたアミノインデックスでは、アミノ酸濃度を測定します。血液中のアミノ酸濃度は、肝臓疾患・腎臓疾患・精神疾患などで変動することがわかっていました。 近年、血液中の複数のアミノ酸濃度を組み合わせて解析することで、癌のスクリーニングに使えないかと検討されてきました。シトルリン、トリプトファン、メチオニン、ヒスチジンは婦人科癌で下降しており、イソロイシンは増加していました。 さらに多くのアミノ酸濃度が、癌患者と健康人の間で異なっていました。これらの違いから、婦人科癌のリスクを導く計算式が作成され、臨床に応用されるようになりました。
    現在のところ、感度60%で癌の存在を識別します。 子宮頸がんについては、簡単な細胞診で癌になる前の異型性のころから診断が可能ですが、子宮体癌・卵巣癌は精度の高いスクリーニング法はありません。
    婦人科癌のスクリーニングには、細胞診や超音波検査が最優先ですが、別の検査方法も参考にしたいと思った時は、アミノインデックスも検討しても良いのかもしれません。
    検査が保険診療で認められていないため、自費扱いになり1万円かかります。 検査(採血)は午前中です。朝は絶食で来院してください。前日は、牛乳・アミノ酸飲料の摂取は控えてください。
ピル服用中に発生した静脈血栓症を重症化させないための対策

低用量EP配合剤の服用中に発生した静脈血栓症による死亡例がマスコミで報道され、不安を感じた方も多いと思います。(以後、経口避妊薬および低用量EP配合剤は類似薬なので、一括してピルと称します。)
ピルはコンドームなどと比べ非常に優れた避妊効果があるだけでなく、月経困難症・月経前症候群(イライラ、抑うつ気分)・子宮内膜症・過多月経・ニキビにも効果があります。厚生労働省は月経困難症の治療薬(保険扱いのピル)として認可しています。薬剤として優れた効果がありますが、副作用もないわけではありません。
日本では、副作用が心配なのか女性の3%しかピルを内服しておられませんが、欧米では30-40%の女性が内服しています。代表的な副作用の静脈血栓症は、女性1万に当たり年間3-9人発生します。
死亡するような重症例はもっと少なくなります。一般的な日常生活の中で遭遇する死亡リスクと、ピルの死亡リスクを比較すると次のような結果になります。

  • ピルと日常生活のリスク(10万人の女性が1年間に死亡するリスク)
ピル服用(健康な非喫煙者) 1
妊娠出産 6
家庭内の事故 3
交通事故 8
喫煙 167

我々が交通機関を利用する際に、交通事故死しないか心配する人は少ないと思いますが、その交通事故死と比較してもかなり低い発生頻度です。
ピルを飲むか飲まないかは、効果とのバランスを考慮して御自分で決められたらよいと思います。
ピルを内服される方は、副作用を重篤化させない対策が日本産科婦人科学会から出されたので、参考にしてください。
日本産婦人科学会では、ピルによる静脈血栓症を重症化させないための対策を検討し、今回公表されました。(一部改変しています)

ピル開始前には問診などで危険因子がないことを確認。

(ピル内服前の問診票には、正確にお答えください。)

〈静脈血栓症危険因子〉

  1. 年齢35歳以上の喫煙者
  2. 産後21日日以内、他の産後危険因子があれば42日以内
  3. 手術などにより臥床が必要な場合
  4. 深部静脈血栓症・肺塞栓症の既往
  5. 遺伝的血栓性素因(抗リン脂質抗体症候群を含む)
  6. 炎症性腸疾患において以下を伴う場合(活動性あるいは広範囲の疾患、手術、臥床、副腎皮質ステロイド使用、ビタミン欠乏、体液減少)
  7. 抗リン脂質抗体陽性(あるいは不明)の全身性エリテマトーデス
静脈血栓症の発生時期は服用開始後3か月以内に多く見られます。以下の症状が主なものです。あれば必ず来院してください。

  1. 激しい腹痛
  2. 激しい胸痛、息苦しさ、押しつぶされるような痛み
  3. 激しい頭痛
  4. 視野の異常、舌のもつれ、失神、けいれん、意識障害
  5. ふくらはぎの痛み・むくみ、赤くなっている
婦人科以外で投薬、入院、手術を受ける際は、経口避妊薬あるいは低用量EP配合剤の服用中であることを伝える。

静脈血栓症を予防できるか明確ではないが、日常生活において、不動状態や脱水にはならないようにする。

※参考:困ったときの連絡先;内服忘れ、併用薬、静脈血栓症の疑いのある症状など。
当院でも可能な限り電話で対応します。
薬剤別(製薬メーカー相談室)の連絡先(多くは平日の9時から17時)

トリキュラー バイエル薬品 0120-106-398
アンジュ あすか製薬 0120-484-339
オーソ 持田製薬 03-5229-3906
シンフェーズ 科研 0120-519874
マーベロン MSD 0120-024-964
ファボワール 富士製薬 076-478-0032
ラデルフィーユ 富士製薬 076-478-0032
ルナベル ウサギは富士製薬
ハリネズミは日本新薬
076-478-0032
075-321-9064
ヤーズ バイエル 0120-106-398
ノルレボ あすか製薬 0120-484-339
漢方・針灸

漢方・針灸などの東洋医学は、古代中国に源をもち、数千年の長い歴史と実践の中で作り上げられた理論に基づく医学です。その診断方法や治療法は西洋医学と大きく異なりますが、一人の患者さんを治療する上では、東洋医学は西洋医学と融合して、なくてはならないものになっています。

東洋医学で患者さんを診断する際には、陰陽・虚実などの病状の把握方法があり、問診のほかに脈診・舌診・腹診でその患者さんの体質にあった薬剤を絞り込んでいきます。関心のある方は本を読んで勉強してみてください。日本人には、比較的理解しやすい理論です。ここでは女性に起こりやすい症状と、気・血・水に関連する代表的な漢方薬をご紹介いたします。

  • 気の異常
    更年期障害や月経前症候群です。憂うつ感・イライラ・怒りっぽい・のぼせ・胸やお腹の張った感じになります。
代表的な漢方薬
加味逍遥散 上記の症状に加え、骨盤のうっ血を伴なう人に。
柴胡加竜骨牡蠣湯 上記の症状に加え、不安感、不眠を伴なう人に。
四君子湯 上記2剤と違って、抑うつ、イライラはなく、元気がない、気力がない、疲れ易い、口数が少ない人に。
  • 血の異常
    血の異常には血のうっ帯、血虚があります。血液のうっ帯は何となく理解されると思います。血虚とは、血の栄養を行きわたらせることができないために、顔色が悪くつやがない、肌に潤いがない、爪の色が悪くもろい、頭がボーとする、等の症状がある状態です。
桂枝茯苓丸 血液のうっ帯に対する処方です。下腹部の痛み・腫瘤・月経困難・不正出血に対して用いられます。妊婦さんには投与できません。
桃核承気湯 桂枝茯苓丸よりさらに下腹部のうっ血がひどく、便秘する骨盤内の感染症・骨盤内出血・打撲に。
当帰芍薬散 血虚と水分の停滞に対する薬剤で、産婦人科で大変よく用いられます。頭が重い・疲れ易い・手足の冷え・腹痛・月経が遅れる・月経痛がある等の症状の方に使います。
  • 水の異常
    体内の水の停滞が引き起こす異常。
半夏厚朴湯 嘔吐や吐き気、咳があり(胃や肺に水の貯留)、気分がふさぎ、喉にものが詰まった感じのある人に。
防巳黄耆湯 汗が上半身にでやすく、下半身に浮腫みのでやすい、色白で水太り体質。疲れ易く、息切れ、関節痛がある人に。
苓桂朮甘湯 疲れ易く、食欲不振、四肢の冷え、めまい、立ちくらみのある人に。当帰芍薬散も補血作用のほかに利水作用を兼ね備えた薬です。

その他に、疲労、食欲不振、頻尿、冷え、痛み、かゆみなどの症状に有効な漢方薬があります。ここに紹介した漢方薬はごく一部ですから、自分の症状に当てはまるものがなくても漢方での治療をお考えの方は遠慮なくお尋ね下さい。

漢方薬は高いと思っておられる方がありますが、代表的な当帰芍薬散や桂枝茯苓丸の2週間分の薬代は、保険扱いで700円程度です。

月経前症候群(PMS)
  • 月経前症候群は月経周期後半(排卵後)に発生する精神的・身体的な症状で、月経が始まると数日で軽快します。精神症状が特にきつい場合を、月経前不快気分障害と呼びま す。排卵後の黄体ホルモンが発症に関連していると考えられていますが、原因はよくわかっていません。
    社会生活に支障を感じるほどのPMSは、約5%に見られます。PMSかなと思 った時は、月経周期のどの時期にどんな症状が繰り返し出現するか日記をつけ確認してください。
    治療は、睡眠を十分に取り規則正しい日常生活を送ること、普段運動をしない 人は適度な運動をし、禁煙・カフェインの制限を心がけ、大豆・魚の摂取が勧められます。重症な人は職場や家庭での仕事の軽減も考えてみます。治療薬は症状に合わせ検討します。
    サプリメントでは、大豆イソフラボン、ヤマイモ抽出物が使われていましたが、最近チェストベリー(薬局でしか扱っていない)の有効性も示されました。漢方では、抑肝散(イライラ、筋肉の引きつり)、加味逍遥散(気鬱、イライラ、むくみ)、柴胡加竜骨牡蛎湯(不安感、夢)などが使われます。
    低用量ピルもホルモン変動が少なく身体症状に効果があります。特にドロスピレノンを使用したピルは、気分を持ち上げる抗うつ作用と利尿作用がありアメリカでは治療薬として認定されています。
    うつ症状がある場合、抗うつ剤も使用されますが、本当のうつ病ではないので症状がある時だけ内服しても有効な場合があります。そ他に症状に合わせ、利尿剤・鎮痛剤・精神安定剤なども使用されます。
    月経前症候群で悩んでおられる方は、まず運動を取り入れ食事に注意し睡眠を十分に取ってください。それでも症状がある場合、医療機関で相談ください。多くの人は漢方の内 服で症状の軽減が見られます。

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